fantasia

時間と愛の関係




旅に出ようと思った。

もう一度自分を見つめ直す時間が欲しかった。


7月3日。
「今日は一歩も外に出ず朝から晩までふたりっきりで過ごした」

その日記の一行だった。

その日記は書棚の思わず見過ごしてしまうような空間に存在した。
私たちの3年間が克明に記されていた。

日々の2人を綴る言葉の羅列。
2人以外にはとてつもなくつまらない読みものに過ぎなかった。

ただ改めて読んでみて
その活字は驚くほどその時間を鮮やかに描写していた。
目を閉じて開けばその瞬間
現実にその生活が広がっているかのような気がした。

その3年間2人に結婚と言う言葉は一度も存在しなかった。
彼女と結婚する気はまったくなかった。

でも決して遊びではなかった。

若いせいだったのかも知れない。

真剣に彼女を愛した。
片時も離れたくなかった。
同じ空気を吸って同じ光景を見て過ごしたかった。





あの滝を見たくなった。



約100mにもおよぶ水流が垂直に繋がり
エメラルドグリーンの巨大な亀裂に吸い込まれていく。

2年前の初夏。
北アルプスを望むその滝を
2人は時間を忘れて見つめ続けていた。

あの時思わず口に出してしまった言葉がある。
ただその言葉が彼女に届くことはなかった。

滝の流れがつくる轟音が周囲の音をすべて遮断していた。

時の流れがつくる感情は
2人の体と心を揺さぶりそして響き続けていた。

その時には気づかないことがある。
近すぎてわからないこともある。

本当の美しさ、優しさはその眼下にある。

その水流を飲み込むエメラルドグリーンの淵にある。

底の見えない神秘をたたえた
大きなうねりをもった淵は
宇宙に広がり続ける滑らかな序章であることを
その永遠の入り口への繋がりであることを彷彿させる。


「The End Of A Love Affair」

いまはっきりとわかった。


もう一度あの滝の前に立とう。

今度はきっと。いや絶対。
君に届く大きな声で叫べるはずさ。(sou)



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