fantasia

透明な風




かすかに金木犀の香りがした。

どこまでも澄みきった青い空が視界に飛び込んでくる。

何気なく見る普段の空が
ひとまわりもふたまわりも天高く感じとれた。


ひとは四季を生きている。


この季節を味わうために
厳冬を越え、真夏の酷暑ものりきってきた。


一年でいっぱいの気持ちを感じ入れるひととき。

「秋」

澄んだ透明な空気は
春のそれとは比較にならないほど清らかなものだ。


10月23日。

忘れようもない一日。
今思考する私のまわりを時間がゆっくり流れていく。


二人で濃密な時間を過ごしてきた。
彼女の誕生日だった。

その当時。
携帯もなく、もちろんメールのような連絡手段もなかった。

突然彼女は消失した。
ほんの数日間だったろうか。とても永い時間でもあった。


ただその事を深く追い求める事はなかった。
彼女がきりだすのを待ってもいいと思った。
それだけ2人は繋ぎ合っていると信じていた。

彼女の隣にはいつも自分がいる。
その幸せと自信に全身を浸りきっていた。

潤いと刺激で気持ちが満ち溢れたとき
なぜか、またもや彼女は消えてしまった。


2年目の10月23日。

僅かな消失ではなかった。
彼女が戻ってくることはもうなかった。



数日後。
一通の手紙が届いた。



海外で生活するひとのもとへ旅立った。
そう記されていた。

赤黄色の小花が舞い降り
地上一面を鮮やかにちりばめていた。

この2年間は何だったんだろうか。



「I'm Coming Back Again」


突然強い秋の風が吹き抜けていった。
透明な中に少しだけ金木犀の香りを含んでいた。

彼女の大好きな香りだった。(sou)




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