fantasia

しあわせな夜




雪が舞っていた。

一面が白におおわれそして銀に変化する街。
その街全体が息を潜めるような静寂に包まれていた。


聞こえるのは俺の足音、そして鼓動の音だけだった。

降り積もる雪の道。


静けさがさらに深い膜を創って沈んでいくように感じた。
静けさにその終わりはないと思った。

そっと、耳を澄ましてみる。
自分の呼吸、そしてかすかな息づかいが聞こえた。
この街は生きていた。

広くおおわれた膜の下で街は生きている。


ドクンではなく
コクーン、コクーンと言う接点で響き合う命の源。
そんな音が心に体にそして耳に伝わってきた。


やっとホテルが見えてきた。
「セントラル・ミュージアム・ホテル」





このホテルを強く見つめる女性がいた。


メールが届いたのは一昨夜遅くだった。
突然に会いたいという。

つい数ヶ月前までつきあっていたひとだった。
愛していた。いや、いまも愛している。

ただ年下。

その甘い言葉に気持ちから入って行った私がいた。
若い事のわがままさ。
でもそう感じた事は今まで一度もなかった。


私自身のほんの小さな心の揺れだったのかもしれない。


もっと強く繋がりを求めその事を実感したい。
本当はいとおしくてたまらない時間。
私を、私だけを見て話して抱きしめてほしい。


あのひとを試しているのかもしれない。
そして実は私自身も…。




あたたかい部屋の窓から見える風景。
それはまるで別世界だった。
強風そして雪が大海の荒波のように
この高層ホテルに突き刺さってくる。


移り変わるその時。
流れゆく時。

年の始まり、その狭間、その夜。
俺はどうしようもなく聴きたい曲があった。


「You And I」


ポッカリあいた空洞をあたたかく埋め尽くしていくように
その人を思う気持ちが溢れ返っていく。

その人を思う気持ちで歌いたい。

大きな声で届けたい。

この街すべてに降りそそぐように。(sou)



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