fantasia

空の向こうへ想うこと




自然吸気V型10気筒507ps/7,750rpmから
とめどなく溢れだしてくるパワー。

微動の変化もなく静寂に包まれた車内が
かなりのハイスピードが出ている事さえ
麻痺させてしまう。


夕暮れの環状線を走っていた。

雄大な都市の巨大ビルの合間を
タイトなカーブとストレートが繰り返す。
そしてつながっていった。

霧状の微かな雨がフロントガラスを濡らす。

空港線への分岐点が見えてきた。
アクセルを強く踏み込む。



紗季にはひょっとしたら
交際を続けていると思い込んでいる男性が
故郷札幌にいた。

紗季にその想いはなかった。
親友と呼べる存在でしかなかった。

あくまで純粋に想いを先送りする男性。

紗季は自分の今を、
真実の想いを伝えるために会いに行くと言った。


ただ搭乗ロビーには来ないでと言った。

「慎一郎、気持ちが揺れてしまうから。
あの場所から見つめていてほしいの。
きっと、いえ必ずあなたのもとへ戻ってくる」


あの場所。

広大な滑走路全景が見渡せるウッドデッキ。
空港4階のそのデッキに面した
「ACTUS 」

2人のお気に入りの場所だった。

安息と興奮が不思議に混在する宇宙の様な空間。
やはり空へとつながる接点だからか。


PM6:30

紗季を乗せたJAL2019便、札幌行きは
その滑走路から飛び立っていった。
空の向こう、天空へと。

この強い想いは紗季に届いただろうか。



アクセルを踏んでクルマをスタートさせる。

左右にそれぞれ突き出したデュアルエグゾーストパイプ。
流線型に切り込んだリアビューは
周囲に独特の圧迫感を醸し出していた。


ふと気づいて、今日初めて
HDDオーディオのスイッチを入れてみた。

突然流れてきた楽曲。

「I'm Only U-Nam」


BMW M6。
そのクルマはU-Namの奏でるギターソロの上を
心地良く泳ぐように加速していった。(sou)




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