fantasia

音と夢につつまれて


「じゃ」
と俺に背中を向けたショージは
専用のSpartan Fingerless Gloves をはめながら
愛車のハーレーNight Train へと軽やかに歩いて行く。

ツインカム96 B エンジンを搭載したその二輪
「FXSTB」は
腹の底に強く響くエグゾーストノートを残して
俺の前から走り去って行った。



ドラムスのショージ。
キーボードのリョウコ。
ベースのテツ。
そしてギターの俺カズ。

4人の手作りの楽曲は、音質、メロディーライン、
先進性、融和性、技術力、安定感、
すべてにおいてとても上質だった。

今だかつて体感した事のないクロスバンドだった。


思いがけもないような大きなメロディーの流れは
源泉のように次から次へと俺たち4人に湧きあがってきた。


とてつもなく運が良くなければ
自分が心の底から希求しているバンドを
音楽性、人間性までひとまとめにして組む事なんて
出来はしない。絶対にありえない。


4人が同じ場所、同じ目的に向かって走っていた。
そして音と言うすべてに関して渇望していた。
人の心を潤し、体の隅々まで流れ込んで来るような、
心も、体も、そして魂までをも満たす音。

その事に、徹底的にこだわった。




俺はショージの事がこの上なく好きだった。
いつもショージを見ていた気がする。


ベースのテツの言葉はいつも楽しかった。
「ふんばって行こうねー」
そんな言葉に俺達3人は腹の底から笑っていた。
「カズ!りき入れ過ぎんなやー!」
いつも俺達の環境を良い意味で緩くしてくれた。


色んな楽曲を制作してきた。

タムタム、シンバルを乱れ打ち
スネアとハイハットは緻密なまでにその時を刻んで行く。

楽曲はすべてドラムスが主導だった。
バンマスの俺がそういう方向にしていった。


バスドラ。
腹の底に強く響くその音は
Night Trainのエグゾーストノートそのものだと思った。



リョウコは俺とつきあっていた。
私的な部分は当然ながら、音楽的な部分で
俺のココロを癒す、とても不可思議な才能に満ち溢れていた。

ショージはリョウコの事が好きだったみたいだ。
俺といえばリョウコの事が好きで好きで堪らなかった。
リョウコもショージの事が気になっていた。
俺はショージの事は男だし
人間としてこの世に存在する事に喜びを感じていた。



俺はバンドの解散を幾度となく考えた事がある。

恋愛感情が入るとバンドってのは
いやどんな組織だって
滑らかな人間関係って難しい。ぎくしゃくしてしまう。

テツに相談してみた。テツは底抜けに明るく
「解散しかねーか!」
と言ってのけた。

結果的に俺たちのバンドは存続した。
もっともっと大きな息吹をもらいながら。



「I Will Always Love You」


2008年4月。
俺たちはメジャーデビューを果たした。
ショージの一言放った言葉がいけてた。

「これからもずっと連れだぜ、カズ」

愛車ハーレーNight Trainにまたがりながら
ショージの顔は光輝いていた。

たぶん俺の顔も。(sou)


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