第2弾

キスデジ赤外透過フィルター換装手術記

 

       

 

  このコーナーは、大切なキスデジのローパスフィルターを、「Hαの波長を透過しやすい」フィルターに

自分で換装した手記です。

 よって、この手記を参考に換装を行って見たいと思う方は、何度も考え直してください。

何度も自問自答してみてください。はたして、このようなことを行って良いのか、悪いのか。

あなたの大切なカメラが取り返しのつかないことになってしまいます。

 この手記を読まれて、換装を実行されて・・・例えば「失敗」されたとしても、当方は、一切の責を負いま

せん。それは、あなたの責任において行ったことですので、あなた自身に責任があります。

 そのことをご充分ご理解いただいた上で、これから先をお読みください。重ねて、ご忠告しておきます。

 自己責任でこの換装ができない方は、絶対にこの換装を行わないでください。

私は、一切の責任を負いません。

 

 

前回のローパスフィルター除去の失敗を踏まえて

 

 前回行った除去改造では、完璧に敗北を帰した。その原因は、キスデジの内部構成、特にコネクター、フレキ

の構造と取り扱い方に対して完全に無知であったことが第一に上げられる。

 私にとって、初めてキスデジを解体した時は、ボディを止めているたった1本の「ビス」を外すことすら勇気

が必要だった。

 今回は、新しいキスデジといえども、4回目の解体になる。前回は、1台で3回の解体・組み立てを行ってい

る。もういっぱしの外科医である。危ない箇所、外してはいけない箇所、力を加えてはいけない箇所・・・を熟

知している。失敗するわけが無い。

 なにしろ観音様をお釈迦様にしているのだ。「今度は絶対に成功する。」これくらいの自信が無くては、次の

クランケをオペできない。

 「今度は、絶対に成功する!」という信念。と言うか・・・哀願というか・・・。

 このプラス思考というかプラス志向は、改造を志す者にとって必要不可欠も意識である。常に前向きでなけれ

ばこんな天国と地獄の間を彷徨うようなことはできない。簡単に言うならば「一か八か」ということになる。

 そう思うと、何かふっきれたような・・・諦められるような・・・自分を納得させられるのである。

 

失敗の数だけ人は学ぶ

失敗の数だけ人は進む

 

 

執 刀 開 始

 

 いよいよ手術開始の時刻が来た。緊張で震える手を押さえつつメスならぬ精密ドライバーを手にした。解体の

手順は、「キスデジIR改造」を参照されたし。

 例のコネクターやフレキの問題は軽くクリヤして快調に手術は進行した。解体〜組み立てはお手の物だ。前回

の失敗を生かしてCMOS基板のコネクターは外さずに作業した。仕事はやりにくいが背に腹は代えられない。

 今回のオペでは、ローパスフィルターを換装するという緻密なプロセスがある。実は、換装する「赤外透過フ

ィルター」のサイズが、既存のローパスフィルターよりも若干大きいのである。ということは・・・

 フィルター枠を削らなくてはならないのである。当初は、削る工作精度に不安があったので、枠を使わずに「

直貼り」も考えた。しかしながら、CMOSとフィルターの距離の問題と直貼りする場合にフィルター面に接着

剤を塗布しなければならず、そのことによる接着剤のフィルターへの影響を考えて、この策は取り止めにした。

 結局、既存のフィルター枠をルーターで削ることにした。実際に削ってみると、思っていたより材質が軟らか

く、柔軟性があった。そのおかげで、切削中に割れることは無かったが、反対に切子が粘ってしまい、綺麗な切

削面ができなかった。仕方が無いので、カッターと半田ごてで切削面をできるだけ滑らかに仕上げた。

 つもりだったが、やはり多くの切削による細かな「毛羽立ち」を残した。この「毛羽立ち」が取れてフィルタ

ー面に付着しなければ問題が無いと判断し、適当なところで作業を止めた。

 もうひとつの問題点は、ルーターで切削したことによるスケアリングの工作精度である。実際、枠を広げるた

めに削っていたが、手作業のためどうしても縦方向に食い込んでしまった。多少の誤差は「誤差のうち」と諦め

て「これで良し」とした。次回ヤル時は、純正とは違う形状、つまり、加工し易い枠を作成してみようと思って

いる。要するにCMOS前面に適当な距離をおいてフィルターが固定されていれば良いわけである。専門的には

微妙なセッティングが必要なのだろうが、こっちは素人なので、そんなことは知ったことではない。写真が撮れ

れば問題は無い。

赤外透過フィルター

 フィルターを枠に接着するにはシリコン系の「バスコン黒」が良いようだが、僅かな使用量のために800円

の投資はもったいなかったので、手持ちのボンドG17をほんの少量を4ヶ所に点を打つように使って接着した

。溶剤は飛ばせるだけ飛ばしてから接着した。

換装完了

 

FFにIDASのHEUIBを装着

 

見事にHαを透過しても、バックグラウンドはニュートラルグレイに映し出される。

 

 前回の失敗を踏まえての今回の手術は大成功であった。やはり、「失敗の数だけ人は学び前に進む」ことを実感した。別の言い方

をすれば「失敗は成功の元」ということになる。

 とても勇気と決断が必要な作業であるが、私のような素人でも改造できてしまう。冷却CCDには及ばないが、それに近い画像が風

景写真を撮るように手軽に得られる。もちろん、ダークノイズ処理は必要だし、ある程度の画像処理を施さなければならない。

 キスデジは630万画素のCMOSを有する。私が所有している個体は、気温5℃前後で10分露出してもアンプノイズは検出できな

い。ダークノイズは数多く発生するが、ノイズ処理でほとんど除去できている。私の場合、画像に対して「究極」を望まないので、パソ

コンのモニターで楽しめれば良い程度のスタンスである。個人で天体写真を楽しむには充分なスペックだと思っている。メーカーはこ

ぞって画素数アップを宣伝しているが、私には高価な新型上級機種より、安価なキスデジを数多く持つことのほうが価値がある。

そんなメーカーの魂胆のおかげで、初代キスデジの中古価格は下落する一方である。こんなうまい話は無い。格安の中古を見つけた

ら、迷わず買っておくことをお勧めする。個人的に楽しむ天体写真を撮影することを目的とするならば、キスデジはまだまだ、現役のカ

メラだと思っている。ただし、「キスデジIR改造」、「キスデジ赤外透過F換装」でお解かりのように、蓋を開けて見るとラジカセと見まが

うばかりである。デジカメ自体が既に「精密機械」ではなく「家電」になっているため、決して永久的なものではない。必ず壊れるし、修

理するならきっと新機種を購入するだろう。

 私にとってデジカメには、かつてのNikonF等の銀塩カメラのようなステータスは無い。半永久的に使えるものではないと思っている

。デジカメは消耗品である。大事にしていても時代遅れになるのを待つだけとも思う。だから、使い倒す。これが私の考え方である。

さて、次はどのキスデジを手術台に載せるか?私のキスデジたちは、眠れぬ日々を送っていることだろう。