Lock On: Flaming Cliffs フライトマニュアル
第6章:空対空ミサイル


ロシア空軍の空対空ミサイル

長距離ミサイル

R-33

R-33はその外観の様子が似ているということから米国のAIM-54フェニックスを大いに連想させます。さらにはミサイルの直径がミリ単位まで同じです。このことは過去におけるK-13ミサイル開発の歴史を知っている人からすれば外国製の兵器をうまくコピーできた事例の一つに過ぎないという憶測を呼ぶ部分でしょう。しかしながら、R-33はロシア人によって一から開発されたものであり、AIM-54との類似性は似たような飛行性能や技術特性に対する要求条件の検討結果として必然的に生じたものです。

ミサイルの開発は後述するR-40MiG-25Pの兵装システムが完成する以前からスタートしていました。

1968524日付けの決議案に従い、E-155MP航空機の開発が決定されました。これはMiG-25戦闘機の近代化バージョンです。これが後のMiG-31となります。MiG-31には新型「Zaslon」レーダーが装備予定となっていました。ミサイルの開発目標は最大射程距離が少なくとも120kmとされました。ミサイル開発は競技設計方式で進められ、PKPKの設計主任:M.BisnovatによるK-50ミサイル案に対して「Vympel」の設計主任:A. Lyapinから提案されたK-33ミサイル案を対案としてぶつけるという形で行われました。結果は「Vympel」案が選ばれました。この設計グループは過去にK-13 K-23の開発指名を勝ち得たという実績があり、このK-33案の指名はそれを引き継ぎ踏襲した形となりました。開発は設計副主任:V.Zhuravlev及びその後任の設計副主任:Y.Zakharovによって率いられました。


6-1: R-33
ミサイル

初期段階では「カナード(前小翼)案」が採用されていました。このミサイルはMiG-25に搭載するK-40型ミサイルのように、翼下面のパイロンに装着するように計画されていました。しかしその後に設計陣によってより「従来を踏襲した」空力計画案に変更されています。このことにより空力特性の質的向上がもたらされました。これは長距離射程ミサイルにとっては大変重要なことです。開発はミコヤン設計局との緊密な協同態勢で進められました。機体下部に懸架した場合に発生する空気抵抗を減らすため、また、ミサイル本体表面に発生する摩擦熱を抑えるために発射母機の機体胴体内にミサイルを半ば格納する案が決定されました。ミサイル搭載数を十分確保できるように機体両側に沿ってペア配置を行い合計4発のミサイルが設置できるように計画されました。この案によりミサイル全長に厳しい制限が課せられることになりました。つまり全長が著しく短いミサイルとなったのです。またこのような配置計画をもたらした別の要因として大口径アンテナを備えたセミアクティブレーダーホーミングシーカーをミサイルに内蔵させるという要求の存在もありました。機体下部に半格納状態でK-33を設置するため、ミサイル上面の二枚の操舵翼は折り畳み式になっています。これによって翼幅が1,100mmから900mmに減少します。また半格納状態で搭載されているためにカタパルト式発射システムを採用する必要がありました。

留意点として開発過程の中で幾つかの異なるK-33派生型が検討されていました。セミアクティブレーダーシーカー型、アクティブレーダーシーカー型、赤外線シーカー型、及び赤外線シーカーとセミアクティブレーダーシーカーの併装型です。しかし技術的・戦術的・経済的理由でミサイルの開発はセミアクティブレーダー型一種に絞られました。

機械式走査アンテナとは異なりMiG-31に搭載されたレーダーはF-14Aに搭載されているAWG-9と同じフェイズドアレイアンテナであり、「Zaslon」によって開発されました。このレーダーはレーダービーム照射方向を非常に素早く変えることが可能であるのに加えてセミアクティブシーカー搭載ミサイルを複数同時に誘導が可能です。これはつまりアクティブレーダーシーカー搭載ミサイルを用いずとも複数目標に対する同時攻撃が可能になったということです。このことからK-33は低廉な装備機器で済むためにAIM-54よりも安価になっています。

K-33第三号機の初飛行は、角速度センサーを用いたジャイロ式安定航法システムを搭載して行われました。

新しい動作特性に加えてK-33はパッシブ式過熱防止装置を装備している点がR-40とは異なります。ミサイルの開発過程及びMiG-25への配備によって得られた経験から数多くのデータが集められ、実戦時におけるミサイルの高度特性や速度特性が明らかにされました。その結果、設計陣はR-33の冷却システムがミサイルの運用や製造を複雑にするだけに過ぎず装備から外すべきと判断しました。

旧来のミサイルレイアウトに従い、このミサイルは四つの部分で構成され留め金で繋ぎ合わされています。ミサイルの先頭部分にはセミアクティブレーダーシーカーと接触弾頭及び無線式近接信管が含まれます。二段目はオートパイロット装置と安全装置付爆風破片弾頭で構成されています。三段目は全体が一室区画になっていて、延長された推進ガス通管及び多口径噴射ノズルが備わった二段式固体推進燃料モーターになります。

四段目はモーター周囲に集められており、高圧ガス発生装置及び制御部内蔵式ターボ発生装置、高圧ガス作動式の姿勢制御装置が含まれます。

1795年から1980年にかけての飛行テストの中で尾部制御翼構造方式が最終的に採用され、空力的な要因で発生する揺れ挙動が起こらないようにすることができました。設計陣はさらにミサイルの制御システムやシーカー部の電波妨害対抗策、低空飛行での運用を想定した制御システム及び無線式近接信管の開発を進めました。1976年の326日に初めて目標航空機(MiG-17のドローン:無線操縦式の被撃墜テスト機)が使用されこれを撃墜しました。これ以前の実射テストではPRM-2パラシュート目標のみ使用されていました。

198156日、K-33R-33と改名され、MiG-3133の兵装システムの一端を担う形で実戦配備されました。以降、Dolgoprudny機械工場で量産型の生産が開始されました。ここは以前に「Vympel」と共同で「Kub:自走式地対空ミサイル発射機」に搭載する地対空ミサイル生産に携わっていた同じ工場です。西側諸国ではR-33は「AA-9エイモス」として知られています。

 

 

中距離ミサイル

R-40

それまでのK-9K-8ミサイルを兵装とした単発ジェット式のE-150系重戦闘機から、E-155R偵察型やE-155P迎撃型といったE-155系の双発ジェット式の迎撃戦闘機へと開発移行が進められるようになり、それに伴ってこの新型戦闘機専用ミサイル:K-40の開発がスタートしました。これは196225日付の決議案:131-62に従ったものです。さらにこの政府公文書には公式共同試験に向けたこれら戦闘機及びミサイル迎撃システム:S-155計画の導入期限を「1964年終わりまで」とすることが明記されていました。迎撃機用ミサイルシステムの開発にはM.Bysnovatを局長とするOKB-4設計局が選定されました。セミアクティブレーダーシーカーは 648研究所で、赤外線シーカーはTZKB-589中央設計局によって、オートパイロット装置はOKB-3設計局で、複合式無線-光学式起爆装置は571研究所で、固体燃料推進モーターはKB-2設計局の81工場で開発が進められました。

これら新型戦闘機はミサイルの搭載能力向上を踏まえて重量が従来の二倍あり、その機体重量と寸法形状が指し示す特色は後に制式化されるMiG-25Pへと引き継がれていきます。一方、その搭載用ミサイルとして後に制式化されR-40TR-40Rと呼ばれるK-40ミサイルの開発は当時既にTu-128-80 用として開発進行中であったK-80ミサイルをベースに進められることになりました。ミサイル誘導には新開発の「Smerch-A」レーダーの使用が計画され、迎撃型のE-155Pにはこの新型レーダーの搭載が予定されました。このレーダーは元来Tu-128-80に搭載されていた「Smerch」レーダーを元に開発・改良されたレーダーです。

新しい設計要素を導入すれば設計内容は従来よりも複雑になります。S-155計画に用いられる新型迎撃機は音速のほぼ2倍の速度で10分以上の飛行継続が可能であることが意図されていました。発射母機とミサイルの構成状況からミサイルは主翼の翼端下部に懸架式で取り付けられることになりました。マッハ速度が大きい状況ではこの部分の温度は300℃まで加熱されます。過熱が引き起こす問題の中でミサイルの機体構成部材に関することはさておくとしても内蔵機器類の動作への影響には対策が必要ですし搭載燃料まで加熱される事態は避けなければなりません。というのも、ロケットモーターは比較的狭い温度域でしか内部弾道学的に安定作動させることができないためです。広範に亘る飛行距離/高度領域を満足し得るような作動条件を備えていなければ致命的欠陥となります。

結果として、K-40ミサイルの開発はK-80と何ら共通点を持つことなく事実上ゼロから進めなければならなくなりました。1962年にK-40ミサイルのコンセプトモデルが「プロダクション:46」として発表されました。このモデルでは二つのレイアウト案が提案されましたが、開発が進むに従ってK-80で採用された標準案ではなくカナード(前小翼)案が採用されました。モーターをミサイル中央部に配置することで、モーター燃焼がミサイルの飛行制御に与える動作影響を抑えることが可能となっています。大きな安定翼はミサイルの高高度飛行能力の改善と同期誤差の影響の低減に貢献しています。ミサイルの航空電子機器の主要部は前方部に位置しており、弾頭や内蔵電源は後方部に位置しています。狭い範囲に向けて爆破する指向性爆薬が実用化されたのはこのミサイルに搭載されているKU-46弾頭が初めてです。弾頭の爆発精度を確かなものとするために、指令式信管及び対妨害信管が「Aist-M」無線-光学式爆発信管と併せて取り付けられています。

K-40ミサイルの推進システム:PRD-134向けの改良案に従い、エンジンノズルも二つに変更されました。ロシア製の空対空ミサイル史上初めて高出力の金属粉混入燃料が使用されています。過熱防止のためにチタン製のボディは外側を断熱材で覆われています。

ミサイル内部温度を動作限界範囲内に留めるために特殊なフレオンガスによる冷却システムが採用されており、この冷却剤は母機のランチャー部に取り付けられているコンテナーからミサイル内に供給されるようになっています。更に幾つかの区画の表面も断熱材で覆われています。高温対策のためTSDレーダーシーカーのノーズコーンはガラスセラミック材を採用する必要がありました。光学式セラミックを使ったТ-40А1赤外線シーカーもこれと同じ設計に基づいています。


6-2: R-40T
ミサイル

K-40の開発はプロジェクトの開始時点で多くの変更が容認されたため遅々として進みませんでした。開始早々の1964525日付の政府決議でOKB-3設計局(オートパイロット装置の開発元)は通称「Chelomey帝国」と呼ばれたOKB-52設計局に吸収されてしまいます。優れたプロジェクトマネージャーとして知られるVladimir Nikolaevichは当面の課題を解決するために組織外部のスタッフを併合しました。K-40ミサイルのオートパイロット装置の開発はNo.118工場に移され、その後すぐにレーダーシーカーの開発がNo.648研究所から「Smerch-A」レーダーの開発元であるNo.131研究所に移されました。この研究所ではE. Genishta率いる設計グループがK-40ミサイルのシーカーの開発を進めました。このようなことからミサイルの開発スピードはますます遅くなっていきました。このプロジェクトマネージャーは更にこのS-155計画のフライトテストを開始するにあたって、K-40ミサイルとは別にTu-128用として開発されていたK-80ミサイル運用を前提とした管制装置を実験機に搭載した状態でのテストが可能かどうかということまで検討の視野に入れていました。この検証作業はE-150系の改造・発展型でありE-155系の前身となるE-152系の実験用戦闘機にK-80ミサイルと「Smerch-A」レーダーのシステムを搭載して進められました。このように計画とは直接関係のない部分でさえ開発が遅れるわけですから本来の計画が期限に間に合わないのは日を見るより明らかでした。


6-3: R-40R
ミサイル

ロシア製では初となる単一パルス・セミアクティブレーダー誘導シーカー:PARG-12の開発には、数多くの新しい技術的解決策が盛り込まれました。開発は設計主任:E. Genishtaによって進められました。解決策の中の一つに70度まで照射角度が変更可能なメインローブアンテナを4基構成にするというものが挙げられます。カセグレン式アンテナがこのために用いられています。シーカーには正弦波・余弦波回転変換器をベースにしたコンピューターが、距離計には二つの積分器が備えられています。初期案にあった電波妨害を行う脅威対象から発せられた強い妨害電波だけを対数特性的に取り除くことができるマイクロ波-発振/受信器が用いられています。対電波妨害防護機能の増強を目的とした特殊な手段が採用され、赤外線シーカーに搭載されています。

Smerch-A」内蔵式レーダーとミサイル管制装置の開発はTu-104#42326)を改造した通称:空飛ぶ研究所を利用しながら行われました。

MiG-25の偵察用改造型機の初飛行は1965315日に行われました。迎撃用派生型機の初飛行は1965年の1026日に行われました。迎撃機のプロトタイプ三号機はレーダー機器を完全装備して1967年の416日からフライトテストが始められました。兵装テストはVladimirovka空軍施設で1968年の8月から1970年の2月まで行われました。1971212日付の決議で兵装システムの実戦配備承認が確認され、MiG-25-40という名称に改められました。レーダーはRP-SA、ミサイルはR-40という名前が与えられました。

R-40の量産型の生産はキエフの「Artem」工場で行われました。1970年初頭にはソビエトの最新軍備に関するドキュメンタリー映画が一般上映されました。映画中にミサイルを装備したMiG-25Pを撮影した場面が幾つかあります。これと同じ画像が西側の雑誌に掲載され、これ以降西側ではR-40は 「AA-6 エイクリッド」と呼ばれるようになりました。

 

 

R-24

K-23の開発過程においてミサイルの射程距離を飛躍的に延ばすことが可能な新型誘導装置が開発されました。実際のところ弾道目標ロッキングシステムはK-23ミサイル用として開発されたものです。しかし一方の発射母機側のレーダーには遠距離目標に対して照準エラーを起こしミサイルを誘導できないというシステム的欠陥が存在したため、ミサイルの実用発射距離は発射母機レーダーの目標レーダーロック有効射程に相当する距離をわずかに上回る程度でした。目標までの距離がこれよりも近い場合は大丈夫なのですが上述のように遠距離の場合は発射後のミサイルが目標追跡モードに入るまでのあいだ自律制御飛行できるようになっている必要があったのです。この場合の有効射程距離はミサイルの自律制御段階での飛行距離とレーダーシーカーが目標追跡モードに入った際の目標ロック有効距離の和として表され、これによって攻撃射程が決定されます。この値はさらにレーダー照射出力とシーカー感度の影響も受けます。


6-4: R-24R
ミサイル

MiG-23MへのR-23実装に伴い、197419日付の決議によりPustovoitovの監督下にある「Vympel」によってより優れた戦闘機用の兵器開発が進められました。1975年にはより強化されたK-24ミサイルの設計草案が提出されました。ミサイルには対電波妨害機能とロックオン有効距離が増強された新型のセミアクティブシーカー:RGS-24 (9B-1022)が搭載されています。更にアナログ計算機を搭載した「pseudo-kinematic link」と呼ばれるシステムの完成により自律制御飛行時間が10秒まで伸びています。照準エラーを問題視しないという考え方によってシーカーの目標ロック最大有効距離よりも30%遠い目標に対しても命中させることが可能となりました。自律誘導機能においては、運動加速度の積分を行うことにより飛行中の慣性制御が可能となっています。このミサイルによって近距離のホバリング中のヘリコプターや低高度飛行中の航空機に対する攻撃が初めて可能となりました。ミサイル開発技術者は機動飛行中の目標や低空飛行中の目標の撃墜率を向上させながら、その一方で複合式あるいは一定間隔式可変型電波妨害への対策機能を強化しました。

新型弾頭の「Topaz-M」のみを開発するという当初の意図はその通りには進みませんでした。最大効果を発揮できるように新型弾頭とより大出力のエンジンを採用し、ミサイルレイアウトも大幅に変更されました。

それまでのミサイルとの外見上の相違点で最も目立つのは後縁部の前進翼導入です。内部のレイアウトも変更され区画数が8から5に減らされました。第一区画はシーカー用です。第二区画には無線式近接信管「Skvorets」とオートパイロット装置、特殊な粉末(炸薬?)を利用した蓄圧器で作動するターボ発電機が含まれます。第三区画は10mの爆破半径を持つロッド()展開式弾頭と安全装置が含まれます。第四区画は固体燃料推進モーター:PRD-287で形成されます。第五区画は制御翼用アクチュエーターに動力供給を行う高圧ガス発生装置が含まれます。

R-24の赤外線誘導式の派生型(プロダクション:160)の開発も進められました。この派生型はTGS-23Т4シーカーの改良型が用いられています。

R-24APU-23Mランチャーの改良型に取り付けられます。

最大射程距離は、R-24R50 km R-24T35km、許容加重G58G、目標高度曲線:0.0425kmです。


6-5: R-24T
ミサイル

R-24の開発とフライトテストは予定よりも早く進められたものの、1981年までにMiG-23ML及びMiG-23P搭載用として承認を受けるはずのミサイルは実戦配備用の開発が遅々として進まずその公式承認が遅れることとなりました。

1982年になって、レバノン南部の武力紛争に際しMiG-23MLに搭載されたR-24が初めて戦果を上げました。シリア側の公式声明によればMiG-23ML戦闘機がF-15C3機、F-4E1機撃墜するに至ったとのことでした。しかしながらこの声明は未確認情報であり他の情報とも矛盾しています。

ごく最近になってR-24の近代化が施され電波妨害対抗機能を改善したシーカーが搭載されています。これをR-24Mといいます。

R-23/R-24系統のミサイルの開発や実戦配備の歴史に関する重大な出来事として、ロシア人パイロット:BelenkoMiG-25に乗ってソビエトから亡命し日本に着陸するという有名な事件があり、それ以降MiG-25用の新型レーダー及び新型ミサイルの換装開発が急遽進められました。その結果ソビエト防空軍迎撃機の搭載レーダーはすぐさま「Sapfir-25(RP-25)レーダーへと装備転換が行われました。これは「Sapfir-23」を元に開発が進められたものです。さらにミサイルの方もRGS-24との統合型であるRGS-25新型レーダーシーカーを搭載したR-40Dミサイルへと装備転換が行われました。

K-24ミサイルの開発は、ロシアのミサイル史上大変画期的な出来事であったと言えます。初期の実施案のまま完成に至ることができたおかげで開発者は苦労の末に最大射程距離に関して言えばこのミサイルと類似したアメリカ製AIM-7Fミサイルを凌駕する性能を勝ち得ることができました。

 

 

R-27

中距離射程ミサイル:R-27系は、あらゆるタイプの航空機・ヘリコプター・無人航空機(UAV)・巡航ミサイルの迎撃と撃破に主眼が置かれています。このミサイルは単機でも飛行隊を組んだ場合でも、また昼夜を問わずに中・長距離航空戦でも運用可能です。R-27は天候状況の如何に関わらずその性能を発揮しとりわけ低空飛行を行う目標や機動飛行を行う目標の撃墜能力が優れています。

R-27はシーカーの種類の違いや推進システムの違いによって様々の型式が製造されています。シーカーにはセミアクティブレーダー型と赤外線型があり、推進システムには2タイプ:標準型と拡張型があります。セミアクティブレーダーによる自動追尾シーカーを搭載した型式をR-27RR-27ERといいます。赤外線式シーカーを搭載した型式をR-27TR-27ETといいます。R-27ERR-27ETは本体が標準型よりも長くなっており、より長時間燃焼可能なモーターを搭載しています。

ミサイル本体の主要材はチタン鋼であり、エンジンはほとんどの部分が鋼鉄製です。

標準型・拡張型いずれの長さのR-27も同じ発射装置(レール式・カタパルト式)が用いられます。APU-470レール式発射装置の場合は主翼下にミサイルが装填されるようになっており、AKU-470カタパルト式発射装置の場合は胴体下面もしくは主翼下面に装填されるようになっています。

シーカーに加え、ミサイル制御装置にはさらに無線修正機能を持つ慣性誘導装置が搭載されています。R-27ではセミアクティブレーダーシーカー式は50度、赤外線式は55度のジンバルリミット(シーカーユニットの可動限界角度)内であれば目標の初期位置に関わらず全方位に向けて攻撃することができます。ミサイル発射時の航空機の最大許容G加重は5G以内です。R-273,500km/h・高度20m27kmまでの飛行目標を迎撃可能です。迎撃目標と発射母機との最大高度差は最大で10kmまでです。最大8Gまでの目標を迎撃可能です。シーカーの種類の異なるR-27ミサイルを同時に併せて発射することにより迎撃目標による妨害対策への対抗能力が増加します。R-27系統のミサイルはVympel設計局によって開発が進められ、1987年から1990年の間で実戦配備が進められました。今日では型式を問わず全てのMiG-29Su-27戦闘機にこれらのミサイルが装備されています。


6-6: R-27R
ミサイル

R-27R「プロダクション:470R (AA-10А アラモ) は、レーダー誘導式中距離空対空ミサイルであり1983年に実戦配備が進められました。ミサイルには無線修正機能を持つ慣性航法誘導装置が搭載されています。終端誘導用にはセミアクティブレーダーシーカーが搭載されています。最大射程距離は3035kmです。速度:時速3,600km、G加重:8Gまでの目標を迎撃可能です。、R-27Rの初期重量は253kgです。長さは4m、本体の最大径は0.23m、翼幅は0.77mです。十字形の操舵翼幅は0.97mで、ロッド拡散式弾頭の重量は39kgです。


6-7: R-27ER
ミサイル

R-27ER「プロダクション:470ER(AA-10C アラモ) は、レーダー誘導式中距離空対空ミサイルであり、R-27Rに更に大きなモーターを取り付けた修正型です。R-27ERの配備が始まったのは1985年です。ミサイルには無線修正機能を持つ慣性航法誘導装置が搭載されています。終端誘導用にはセミアクティブレーダーシーカーが搭載されています。最大有効射程距離は66kmです。迎撃可能最大目標高度は27kmです。R-27ERの初期重量は350kg、長さは4.78m、本体の最大径は0.26m、翼幅は0.8mです。操舵翼幅は0.97mです。ロッド拡散式弾頭の重量は39kgです。Su-27とのその同型機がこのミサイルを搭載可能です。


6-8: R-27T
ミサイル

R-27T「プロダクション:470T (AA-10B アラモ)は、中距離射程空対空ミサイルであり、1983年に実戦配備となりました。この型式の R-27には赤外線シーカーが搭載されています。R-27Tの発射に際しては事前に赤外線シーカーで目標をロックオンしておかなればなりません。最大有効射程距離は30kmであり、高度24kmまでの目標を攻撃可能です。発射時の重量は254kg、ミサイルの長さは3.7m、本体の最大径は0.23mです。翼幅は0.8mです。ロッド拡散式弾頭の重量は39kgです。Su-27MiG-29及びその同型機に搭載可能です。


6-9: R-27ET
ミサイル

R-27ET「プロダクション:470ET (AA-10D アラモ)は、中距離空対空ミサイルであり、1985年に実戦配備となりました。この型式の R-27には赤外線シーカーが搭載されています。R-27ETの発射に際してあらかじめ赤外線シーカーが目標をロックオンしておかなればなりません。R-27ERのようにR-27ETにもより大きなモーターが装備されており、より長い射程距離を飛行することができます。最大有効射程距離は60km(赤外線シーカーが目標をロックオンした状況において)、高度27kmまでの目標を攻撃可能です。R-27ETの重量は343kgです。ミサイルの長さは4.5m、本体の最大径は0.26m、翼幅は0.8mです。ロッド拡散式弾頭の重量は39kgです。Su-27及びその同型機に搭載可能です。

R-27EM (LOFC2記載削除) 名称:R-27EM (AA-10M アラモ)は、中距離ミサイルであり、1982年に実戦配備となりました。このR-27の派生型は長距離用のモーターが備えられており射程範囲が増大しています。このミサイルには無線修正機能を持つ慣性航法誘導装置が搭載されています。終端誘導用にはセミアクティブレーダーシーカーが搭載されています。これによって高機動飛行を行う航空機・低空飛行を行うヘリコプター・巡航ミサイル(トマホーク)・対艦ミサイル(ハープーン)への攻撃が可能になっています。最大有効射程距離は70kmです。高度27kmまでの目標を攻撃可能です。発射時の重量は350kg、ミサイルの長さは4.78m、本体の最大径は0.26m、翼幅は0.8mです。ロッド拡散式弾頭の重量は39kgです。Su-27及びその同型機に搭載可能です。

 

 

R-77

ロシアの第四世代戦闘機用のミサイル開発はMiG-29及びSu-27への導入を以て完了しました。この時点で第五世代戦闘機の技術的アウトラインの定義付けが進められていました。重要な点として、アメリカでも時を同じくしてアクティブレーダーシーカーを搭載した新型中距離ミサイルの実用検討:AMRAAM (AIM-120A) 開発計画に着手しています。

R-27の設計は補助操舵翼を必要としない「前小翼」案を実現することで完成に至りました。ただしその引き換えとして方向舵翼幅が大きくなっています。その結果、胴体内格納庫へミサイルを収納する方式だと搭載数をあまり増やすことができません。胴体内格納方式はレーダー断面積が減少することからその採用が積極的に進められておりロシア第五世代戦闘機の特長たる部分でもあります。AMRAAMR-27ETよりもコンパクトで二倍も軽量となっています。この新型アメリカ製ミサイルはAIM-7Mに比べても1/3以下の重量しかありません。

このようなことからソ連は1980年代初頭からミサイル重量:160165kg以下に抑えなおかつアクティブレーダーシーカーを搭載した中距離ミサイルの設計に着手しました。このミサイルにはSu-27M及びMiG-29M用に開発された新型レーダーとの互換性も求められました。この新型ロシア製ミサイルはのちに数多くの展示会でRVV-AEという名称で公開され、ラチス(格子面)状の尾部操舵翼を備えているという点でAMRAAMとは大きく異なっていました。空対空ミサイルにこのような操舵翼を用いるのはこのミサイルが初めてです。


6-10: R-77
ミサイル

R-77もしくはRVV-AEという名で知られるミサイルの開発は「Vympel」と「Molniya」を含む統合設計グループによって行われ、このグループは V.Pustovoitovによる直接の監督の下、G.Sokolovskyによって率いられました。開発完了はV.Bogatskiyの監督の下で迎えており現在彼は設計主任となっています。

それまでの三角形翼を踏襲せずに彼らは短いテーパー翼「ストレーキ」を導入しました。この翼型はそれ以前ではアメリカの「ターター」ミサイルから始まる艦対空ミサイルシステムに採用されています。空対空ミサイルとしてのRVV-AEが備えるユニークな特徴は、折り畳み式のラチス状尾部操舵翼です。この操舵翼は折り畳み状態ならばミサイルの全幅寸法以下に収まります。軽量で、他種に比べ相対的に全長が短いため、このミサイルは戦闘機胴体直下に数多く搭載させることが出来ます。さらには尾翼フィンの翼弦が小さいため(格子の組子の奥行が浅いため)ヒンジにかかる回転モーメントは少なくて済み、飛行速度や高度、迎え角の影響はほとんど受けません。操舵翼を動かす電子アクチュエイターに要求される回転モーメントは1.5kGm以下で済みます。このことによりR-77では小型・軽量のアクチュエイターの採用が可能となったのです。操舵翼は迎え角:40度まで空気力学的に有効に機能し、制御パラメーターを支援するに足るだけの高い剛性を備えています。無論、ラチス操舵翼にも短所が幾つかあります。空気力学的な抗力が増大してしまう点、レーダーの反射断面が増大してしまう点です。しかしながら、くぼんだ状態になっている胴体下兵器ステーションに操舵翼を折り畳んだ状態で格納されることによって上記の短所は相殺されます。

ミサイル開発は厳しい重量制限ガイドラインに沿って進められ、サブユニット・コンポーネント・システムをミサイル胴体の決められた容積内に収めることが絶対条件として求められました。その結果、それまでにないユニークな設計計画方式が出来上がったのです。所謂「管理方式」ミサイル技術開発計画案が提出されるや、主要メーカーの賛同に留まらず航空産業大臣直々の賛同が得られるまでに至りました。

R-77の構造は5つの区画からなり、それぞれが楔形のクランプで接続されています。一番目の区画はアクティブレーダーシーカーが収められており、二番目の区画には攻撃目標のサイズに合わせてパラメーターを調整可能なアクティブ式レーザー信管、接触感応装置、自動航行装置が収められています。三番目の区画には、ロッド拡散式弾頭と安全装置が収められています。この弾頭は爆発すると鋼鉄ロッドが断裂し微小破片が輪状に拡散します。爆破半径は7mです。四番目の区画は単段式の固体燃料推進モーターで構成されています。最後尾の区画は操舵翼アクチュエーター部の前面にサーマルバッテリー(熱電池)が収められています

ミサイルは完全に組み立てられた状態で運搬され、APU-170またはAKU-170のレールから発射されます。1984年の5月からR-77MiG-29Sの兵装システムの一部としてテストが始められました。同年内にこの新型ミサイルは量産態勢に移行しています。状況テストは1991年に完了し1994年の223日にR-77は正式に実戦配備となりました。

高高度飛行中の爆撃機サイズの目標に対する最大有効射程距離は50kmです。戦闘機サイズの場合は45kmにまで減少します。最短射程距離は300mです。発射時の重量は177kg、弾頭重量は21kg、ミサイルの全長は3.6m、胴体の最大径は0.2m、全幅は0.4m、操舵翼全幅は0.7m、最大飛行速度はマッハ4、撃墜可能な目標の最大速度は3500km/h、有効高度は20mから25kmまで、最大許容G加重は12GMiG-29 S, Su-30, Su-35戦闘機にこのミサイルシステムは搭載されています。

90年代に入るとR-77は国際展示会で度々公開されるようになりました。西側諸国では「AA-12アダー」として知られています。

 

 

短距離ミサイル

R-60

交戦空域全体に亘ってあらゆる方向に敵味方入り乱れた状態で熾烈な空中戦が繰り広げられているような状況下では敵味方識別:Identification of Friend or FoeIFF)を行なうことはほぼ不可能です。敵との距離が数km以内であれば信頼性の高い直接視認による識別方法が初めて可能になりますが、しかしそれではアメリカのAIM-7「スパロー」中距離ミサイルの射程距離圏内に入ってしまっている状態がほとんどです。

東西のミサイル - 即ちアメリカのAIM-9B 「サイドワインダー」及びソビエトのK-13A - いずれにおいても、高G加重が掛かる状況下つまり空中戦闘機動(ドッグファイト)ではまともに命中しないということが明らかにされました。東西いずれでもミサイルが強いる厳重なG加重発射制限のせいでパイロットは戦闘機の機動能力をフルに発揮できないという状況にありました。また、仮にミサイルを発射したとしてもこれら初期型ミサイルの機動性能は貧弱であったため機動飛行を行う目標に対しては命中しなかったのです。このようなミサイルのほとんどは有効発射範囲が目標後半球に限定されていました。

機動飛行中に用いられる短距離ミサイルは、発射後の飛行中の諸条件を自律的に調整するオートパイロット機能が備わっていますが、それが有効に機能するためには発射前にミサイルシーカーでターゲットロックする必要があります。K-13ミサイルに搭載されている赤外線シーカーはターゲットロックに時間が掛かりなおかつロック可能な角度も狭い範囲に限られていました。そのためターゲットロックとその維持に高度の飛行技術が求められたのです。ベトナム戦争中当時、これら初期型ミサイルの欠点のせいで機関砲を備えていないMiG-21PFF-4C 系統の「ミサイル専用搭載機」のパイロットが真っ先に命を落としていきました。

このことから1960年代後半にはアメリカ・ソ連そしてフランスが同時に新しい小型ミサイル開発に乗り出しました。このミサイルは近接空中戦闘に主眼が置かれました。長射程である必要がないため軽量化と小型化が可能でした。一度の攻撃パスで複数目標を攻撃可能な能力及びその発射性能は戦術上の観点からすれば従来のミサイルよりはむしろ機関砲に近い取り扱いになります。ソ連における近接空中戦闘用ミサイルの開発に多大な貢献を果たしたのはMinaviaprom第二研究所の研究者たち、とりわけR.Kuzminskiy V.Levitinでした。

他にも1960年代後半には自走式地対空(SAM)システム「Strela-1」用の小型地対空ミサイル:9M31の開発が進められていました。このミサイルはK-13Aに比べて長さが2/3、重量は1/3しかありませんでした。これは軽量型の弾頭(従来の1/4の重量)の採用が大きく影響しています。新型の近接戦闘用空対空ミサイル:K-609M31をベースにその性能計画が立案されました。

しかしながら9M31の品質は数多くの点で航空兵器として有効に機能するための条件を満足していませんでした。9M31には画像コントラストを利用したターゲットシーカーが搭載されていましたが、これはグランドクラッター(地表面からの雑音信号)が画像背景に存在しない状態でしか目標をうまく捉えることが出来ませんでした。その上、9M31はミサイル本体軸を目標に向けて直接照準する必要がありますが、このような照準方法は近接空中戦闘においては極めて困難です。近接空中戦闘でのミサイル照準は発射母機の火器管制システムによる目標指示に従うようになっているのです。また9M31の推進エンジンが持つ目標撃墜有効速度は遷音速域までが限界でした。

K-60の開発において注目すべき重要点は、その開発を9M31ミサイルの設計元であるA.Nedelman率いる Minoboronprom設計局ではなくMinaviaprom PKPK (OKB-4設計局)に委任されたというところです。M.Bysnovaty設計主任と彼の第一副主任であるV.Elaginが加わり、A.KegelesG.SmolskyI.Karabanovが開発の陣頭指揮を執りました。結果としてK-60が「Strela-1」から引き継いだのは初期案とは対照的にミサイル直径と弾頭サイズのみでした。K-60の重量は9M311.5倍あります。

K-60ミサイル開発における技術解決の主だった部分を振り返ってみると、その開発陣はK-8 K-80といった比較的大型サイズの中・長距離ミサイルの開発に成功を収めた連中であり、設計に際してはK-13系統のミサイル開発の経験のある同僚の意見を頼りに検討を進めざるを得ない状況にあったということが判ります。尤も、K-60は「Vympel」が造ったミサイルとは根本的な部分で数多くの相違があります。


6-11: R-60M
ミサイル

K-13と同様にK-60の第一区画には赤外線シーカーが収められています。S.Alekseenko率いるキエフの「Arsenal」設計局の設計陣によって開発された「Komar (OGS-60TI)という名のこのターゲットシーカーには、低慣性ジャイロ安定装置が搭載されておりこれによってオフボアサイト角:12度までの目標探知が可能となっています。また、高迎え角時での操舵翼の効きを増大させなおかつ胴体表面の気流を整えるためにシーカー本体外側に小型のデスタビライザーを取り付ける方法が採用されています。

小型弾頭の破壊能力を決定するレイアウト案は数多く存在します。近接信管を取り付けた弾頭の場合、爆破半径2.5m以内であれば目標にダメージを与えることが出来ますが確実に目標を破壊するためにはミサイルの直撃が求められます。致命的なダメージは弾頭が目標の外殻を貫通することによって生じます。よってK-60のロッド拡散式弾頭は(従来に比べて)可能な限り前方へ移動しておりターゲットシーカー後部の第二区画に位置しています。軽量な割に相対的に直径が大きいため、弾頭は大きな内部チャンネル?で造られています。第三区画には安全装置・アクチュエーター・オートパイロット装置が収められています。オートパイロット装置はとりわけ重要な装置でありK-13と比較してもより厳しい機動性能要求を満足できるようになっています。この区画の外殻に空力操舵翼があります。第四区画には無線式近接信管が搭載され、その隣にはその動力源となる二基のタービン駆動式発電機が配置されています。このタービンは蓄圧器からの噴射圧によって駆動する仕組みとなっています。

第五区画には時変式推力制御ダイアグラムによって作動する固体推進剤PRD-259エンジンが収められています。エンジン躯体には三角形の後退翼が取り付けられています。翼長は短いながらも機動性を確保するには充分な面積を有し航空機にたくさん搭載できるようコンパクトにできています。翼の後縁に沿ってローレロン(スリップ気流駆動フライホイール:歯車状のもので空気抵抗によって回転し、そのジャイロ効果によってミサイル胴体の回転抑制を行う)が搭載されています。

K-60 (プロダクション:62)は極めて短期間で開発が進められました。1971年には実射テストを開始しており、搭上に置いた熱源に向けて地上発射装置からミサイルを発射しています。その後すぐにMiG-21への搭載テストが開始されています。197312月、フランスの「Magic」ミサイル完成に先立つこと二年、K-60 R-60という名称に改められ実戦配備となりました。ソ連属国にR-60を搭載したMiG-23sが出現するようになると、この新型ソ連製ミサイルには「AA-8 エイフィド」というコード名が与えられました。

R-60は距離7.2kmまでの目標を攻撃対象とします。ただしこの射程距離は高度12km以上で発射された場合のみ到達できる距離です。地表面近くではこの1/3の距離になります。ミサイルが発射可能となるのは発射母機が7G以下で飛行している場合です。赤外線シーカーの探知限界角度は5度でありロックオン後はジンバルリミット:3035度以内で目標を追尾可能です。

目標が8G以下で機動飛行を行っていればミサイルは目標撃墜可能です。二発のミサイルを使って同時発射攻撃した場合の予想撃墜率は7080%です。

ミサイルが小型・軽量であることから様々な発射装置:単発式・二連式・三連式の開発が進められました。PU-62-Iは単一レール式、PU-62-IIは二本レール式です。PU-62-IIは左翼側と右翼側で違う形式が存在します。

R-60が備える良好な性能により様々なタイプのソビエト軍戦闘機:MiG-21, MiG-23, MiG-27, MiG-29, MiG-25 , MiG-31, Su-15,  Su-17に搭載することが出来ます。Su-24 ,Su-25では防衛用兵装として搭載されています。改良式のAPU-60-I, APU-60-II発射装置もこのR-60の汎用性に貢献しています (APU-60-IIは同時に二発のミサイルを懸架することが可能です)R-60は通常の武器ステーションにも装填が可能であり、機械式固定装置とインターフェイスコマンド受信用の単独の電気コネクター端子を備えています。輸出用のR-60R-60Kと呼ばれています。R-60の品質の高さは1982年レバノン上空で起きたシリア軍戦闘機とイスラエル軍戦闘機の空中戦で証明されました。数機のイスラエル軍戦闘機がエンジンノズルにR-60を食らったのです。

K-60の実戦配備開始とほとんど同時にR-60の近代化計画が始められました。強化型のシーカー:「Komar-M (OGS-75)R-60M派生型に搭載されました。探知限界角度は17度まで増え、赤外線シーカーを冷却することにより目標を前方から攻撃する能力が備わりました。より効果的な弾頭小片材を利用することで弾頭重量は17%増加しています。従ってミサイル重量も増えて全長も43mm長くなっています。最短射程距離は従来の1/3までに減り最大攻撃有効距離は500m増えました。

R-60R-60Mは過去30年に亘って戦闘機用として広範に用いられました。このミサイルが「副武装」として、より強力で射程距離がより長いミサイルシステムと併用されるようになったのはごく最近のことです。MiG-31のような戦闘機に搭載する場合は飛行速度が3,000km/hにまで達することから極度の過熱対策が追加修正措置として追加されています。

 

R-73

1960年代末のベトナム戦での惨憺たる結果で得た教訓から、アメリカは第四世代の戦闘機: F-14F-15の開発に乗り出しました。F-16F/A-18といった小型戦闘機がそうであるように、これらの戦闘機は航空優勢を獲得することに主眼が置かれており近接空中戦闘も視野に含まれていました。1970年代初頭のソ連では、最新鋭の戦闘機設計に関して西側諸国が出す結論に対して「同解」をぶつけるという姿勢を取りました。それが後にSu-27 MiG-29と称される戦闘機になるのです。

新世代のソビエト軍戦闘機の武装となる新型ミサイルに要求される理論性能は、たとえR-60M(残る数年で開発が完了を迎える)を特別に強化したとしてもその要求に充分に応えられないということを指し示していました。分析の結果、新世代ミサイルは高機動性と全方位攻撃能力を兼ね備えていなくてはならなかったのです。

当初はこれらの性能要求条件は分割して二つの異なる設計局:「Molniya」設計局と「Vympel」設計局に提示されました。このような先端技術開発計画の骨子を定めるに当たってこれまでの分析結果と予備開発作業の内容を再検討した結果、将来登場するSu-27MiG-29の要求性能を定めた1974626日付の決議案においてまず「Molniya」設計局に対しては高機動・小型・近接空中戦闘能力を有するミサイル:K-73の開発を委任することが決定されました。このミサイルの当初の開発構想はR -60の強化というかたちを取っていましたが高機動性という要求条件をふまえてその重量設定をR-60R-13の間にまで増やすことが認められました。


6-12: R-73
ミサイル

同日、別の決議案が提示されもう一方の「Vympel」設計局に対しては全方位射程の短距離ミサイルの開発が委任されました。このK-14と呼ばれるタイプのミサイルはK-13系統の開発をさらに推し進めたものであり、赤外線シーカーと素晴らしい空力性能を兼ね備えていました。

「超」-高機動性能という要求条件は、K-73が極めて高い迎え角(40)で動作する必要があることを定義付けました。このような角度においては従来の空対空ミサイルにあるような空力操舵翼は全く効きません。こうなるとガス動力学に基づく推力偏向式の飛行制御ユニットへの移行は避けられません。翼面形状の検討は相対的に短射程であることから効果なしと判断されました。

K-73派生型第一号機はそのサイズと重量に関しては設計値が予め定められていましたが、全方位シーカーに関しては構想案がありませんでした。しかしながらキエフ「Arsenal」設計局(以前にモスクワ「Geophisica」設計事務局と協同した)が、新型の比較的コンパクトなシーカー「Mayak (OGS MK-80)を開発しました。この新型シーカーは目標捕捉角度が60度まであり、R-60用シーカー同等に比べ倍以上の能力を備えます。その後にK-73のジンバル可動限界は75度まで増大し、最大有効角速度は毎秒60度まで可能になりました。この「Mayak」シーカーは更に新型の高性能対妨害装置(フレア対策用)が備わっています。画像検知器の感度域が増したことに加えてパルス式信号変換器が適用され、複数の独立チャンネルを備えたデジタル信号処理装置が導入されました。撃墜能力を高めるために目標命中位置を決定するロジックを調整して目標となるエンジンノズルよりも前方地点に狙いが定まるようになっています。ミサイル弾頭によるダメージが飛行機システムの中でより重要な部分つまりパイロットに対して及ぶようになっているのです。

全方位撃墜能力は公式条件から省かれていましたが、遅かれ早かれ要求として提示されることが明白であったので、K-73の開発者は「Mayak」シーカーの更なる性能向上を目指しました。求められる能力を満たすためにはK-73の大きさと重量の増大が求められました。

初期の無翼型の設計案は機動性能に問題がありました。一般的に高迎え角での攻撃が求められるのは接近戦(ドッグファイト)であり、この設計案では不都合が生じやすいのでした。あるときには空力操舵翼の代わりに6本の大きな片持ち梁のような突起を付けた変形型のミサイルを検討した設計者もいました。

しかも、飛行制御を推力偏向のみに頼った方式ではモーター(推進装置)の作動時間内しか飛行制御が行なえないため、結果として飛行時間に制限が生じてしまいます。これは戦術上の運用の柔軟性を著しく損なうことになります。G.Dementievが陣頭指揮を執って再検討した結果、K-60のそれと似た空力設計案の採用が決定されました。ただし空力設計案だと無翼型プロトタイプとは異なり旧来のジャイロスコープを備えたオートパイロット装置を搭載することになり、そうなるとミサイル本体のロール回転を抑えるような回転安定保持機能を備えなければなりません。解決策としてこのミサイルではローレロンによる空力制御方式ではなくエルロンによる動力制御方式を採用し、なおかつそれに伴う本体重量増加が生じないような仕組みになっています。それを可能としたのは、本体尾部にあるエルロン用アクチュエーターもその他の飛行制御ユニットと同様にガス駆動式とする方法です。ミサイルの飛行制御はデスタビライザーの前方にある迎え角・横滑りセンサーからの情報がオートパイロット装置に伝えられることによって行われます。R-60と同様にこのデスタビライザーには空力操舵翼の前方で気流をまっすぐに整える整流板の役割も備わっています。

ミサイルの第一区画にあるセンサー・デスタビライザー・空力操舵翼、これら一連のものが特徴的な形「モミの木」のような形を成しています。4枚の空力操舵翼はそれぞれペアで二つの空力制御コネクターに取り付けられ、第二区画前方の操舵用アクチュエーターによって動作します。このアクチュエーターに続いて第二区画にはオートパイロット装置とアクティブ式無線近接信管が配置されています。第三区画は固体燃料ガス発生装置が占めています。ここで生み出された機械駆動用流体ガスは第二区画にある空力操舵翼用アクチュエーターに一旦送られ、それからガスのパイプ管を通してフェアリング部に至ります。このガスはその後ミサイル尾部のエルロンと推力偏向用排気ベーンを順次作動させることになります。第四区画にはロッド拡散式弾頭が備えられ弾頭内に安全装置が取り付けられています。弾頭の爆破半径は約3.5mです。第五区画には一段式の固体燃料推進モーターがあります。ミサイルの尾部にはエルロン用のアクチュエーターと排気ベーン用アクチュエーターがあります。

エンジン躯体が鋼鉄製であることを例外とすれば、機体のほとんどはアルミニウム合金製です。各セクションはバヨネット・ジョイントで連結されており、例外的に第五区画だけがフランジ・ジョイントで接続されています。完全に組み立てられた状態でシールで密封された木製クレート(運搬用の箱)に入れて運ばれます。ミサイルは P-72 P-72D発射装置(APU-73-1 APU-73-1D)で戦闘機翼下に懸架されます。

最終的には二つの空対空ミサイル設計チームは協同で開発を進め、K-73の開発は「Vympel」設計局で完成を迎えました。このミサイルは1983年の622日の決議案に基づきR-73として実戦配備に投入されました。R-73の最大射程距離は目標が高高度かつ前半球位置の場合で30kmです。総合的に見ればミサイルの性能特性は当初の条件を満足していますがしかし同時にミサイル重量は当初の設計仕様の1.5倍となっています。

R-73K-73E派生型という名称で国外に輸出され1988年の東ドイツへの輸出が最初でした。このミサイルは西側のコードネームで「AA-11 アーチャー」と命名されています。R-73ミサイルをヘルメット搭載型指示装置「Shel-3UM」と組み合わせて使うことによりパイロットは近接空中戦闘における航空優勢を獲得できます。このことは西側最強の戦闘機を駆るNATO軍のパイロットと旧ワルシャワ条約機構加盟国(とりわけ東ドイツ)との初期共同訓練で確認されました。

1990年代になり、「Vympel」は一連の国際展示会の中でR-73に関して様々な特長を強調しました。その中でも特筆に値するのが後半球から接近してくる脅威対象に対してミサイル後方発射装置を使って攻撃している攻撃機の写真の展示でした。R-73の射程距離は0.320kmで高度差20kmの目標に対して攻撃可能です。初期重量は105kg、ミサイル全長は2.9m、本体最大径は0.17m、全幅(翼幅)0.51m、操舵翼幅は0.38m、撃墜可能な目標最大速度は時速2,500km、弾頭重量は7.4kg、撃墜可能な目標の最大G加重は12Gまで、MiG-29Su-27及びその他の派生型がこのミサイルシステムを搭載可能です。

以下の表は幾つかのロシアの現用ミサイルの機種毎の特性を比較しています。 

仕様・特性

R-27R/T

R-27ER/ET

R-77

R-33

設計・開発

Vympel

実戦配備年

1987

1990

1994

1981

航空機搭載数

4発:MiG-29, MiG-29SMT,Su-27,Su-35,Su-34
6
発:Su-33

68発:MiG-29S, MiG-29SMT
10
14発:Su-33,Su-35
12
発:Su-34

4発:MiG-31

火器管制システム

SUV S-29, SUV S-29M,
SUV S-27, SUV S-27M

SUV S-29M, SUV S-27М

SUV Zaslon

空力設計

デスタビライザー付前小翼構成

テーパー翼付標準構成

標準構成

重量 単位:Kg

253

354

177

520

弾頭重量 単位:Kg

39

21

47

弾頭の種類

ロッド式

重層ロッド式

爆風破片式

本体直径 単位:m

0.23

0.23/0.26

0.20

0.38

全長 単位:m

3.96

4.56

3.60

4.15

操舵翼幅 単位:m

0.77

0.8

0.7 (折畳時)

1.12

推力対重量比 単位:Kgs/Kg

62

94

79

73

モーターの種類

一段式

二段式

一段式

二段式

シーカージンバルリミット 単位:度

±50° レーダー式目標捜索機器
±55°赤外線式目標捜索機器

±180°

±60°

誘導システムの種類

無線修正型慣性誘導:発射後は目標にロックオンされたセミアクティブレーダー型TSDによる自律誘導、赤外線型TSDは液体窒素で冷却

無線修正型慣性誘導:発射後は目標にロックオンされたアクティブレーダー型TSDによる自律誘導

無線修正型慣性誘導:発射後は目標にロックオンされたアクティブレーダー型TSDによる自律誘導

誘導方法

比例航法

目標最大速度
単位:km/h

3,500

3,600

3,700

目標飛行高度
単位:km

0.03 - 25

0.03 - 27

0.02 - 25

0.05 - 28

最大有効射程距離:
前・後半球 単位:km

45/18

70/30

55/20

120/40

最小有効射程距離:
後半球 単位:km

0.5

0.3

2.5

目標最大G加重

8

12

3 4

-4