[ ス カ ー ト の 中 ]





「・・・・なぁ 山崎ぃ。もうやめたほうがいいんじゃねぇか・・・・沖田さんと『スピード』やるの。」
放課後オレンジ色に染まるグラウンドを見ながら、剣道部の藤堂が声をかけた。6時限の授業が終わった後に、みっちりとした練習。着替えもそこそこの剣道部の面々は、息こそ落ち着きはしたがまだ汗は引くに至っておらず。開け放した体育館のドアや窓から、ゆっくりと沈む夕日を見ていた。その中に、セーラー服にミニスカートの人物が1人、皆と同じくぼんやりと太陽を見ている。
「なんででしょうね・・・・こうなるんですよね・・・・はははははははは」
最後のほうはなんか笑っているようで笑えていない。そう、山崎はれっきとした男であった。



同じ委員会で同学年の沖田と、仲がいいようで遊ばれていて。それでも決して悪意からばかりじゃないと信じている。いや信じさせて。賭けやゲームに負けた罰ゲームと称して、もう何度痛い目にあったかわからない。ただでさえ、沖田には山崎には逆らえないような独特のオーラがあるのだ。今、山崎が男ながらにして学校規定の女子の制服を違和感無く着こなしているのも、それらの経験の賜物なわけで。



「もう、慣れましたよ、このカッコも・・・・えー、んで、今日は、俺がこのまま床掃除することになってるんで。皆さんは上がってくださって結構です」
「結構、つったってなぁ・・・・」



  正式な剣道部員ではないはずなのだが、沖田に引っ張られるように、山崎は既に剣道部のマネージャーのような存在になっていた。中性的な顔立ちに細かい気配り、そして優しい心遣い。そこらの女子マネ顔マケに、山崎は既に剣道部のアイドル的存在である。しかし・・・・道場の掃除だけは、礼に始まり礼に終わる剣道部員の仕事でもある。それに、毎日というわけでもなく2週間に1度くらいの事であるし、つい先日床掃除は部員で済ませたばかりではなかったか。それを山崎は知っているのかわからないが、沖田の意図が図りかねる。
部長の近藤は、山崎と同じく沖田との賭けに負けた罰ゲームで、女子のテニスウェアを着ようとしたところを銀八にしょっぴかれたところ。騒ぎの張本人の沖田はとんずらしたところだ、が・・・・部員たちは先ほどから痛いくらいのオーラを背後から感じていた。―――剣道部副部長・土方。1人さっさと着替えを済ませ更衣室から出てきてから、ずっと殺気めいた雰囲気をかもし出している。この鬼の副部長が山崎に執心なのは、普段の行動より傍目から見て明らかであった。言いたいことがあるなら言えばいいのに・・・・と、その殺伐とした空気に、新入部員などはたじたじである。



それぞれの思いを抱く部員たちをよそに、セーラー服姿の山崎はバケツに水を張り、よいしょっというかけ声と共に屈んで雑巾を絞る。見えそうで見えないスカートの中身に目がいくのは、悲しい男の性か、それとも山崎相手だからであろうか。・・・・といっても、どうせ自分たちと同じ、トランクスかそこらに違いない・・・・とふんでいた部員は、目を見張った。
よっと両腕を前に腰を折り、裸足でたたたた・・・・と床を雑巾掛けする山崎がはいているのは、ブルマーである。・・・・チラ見しかできないが、おそらく、これまた学校規定の。銀魂高校のブルマーは赤系の独特の色なので、まず間違いないだろう。平静を装っていた土方が、がたっと派手な音を立ててずっこけた。―――あ、やっぱり見てたんだ・・・・という周囲の視線をまとって。



「や、山崎ぃぃぃぃ!!」
「は、はいよっ!なんでしょう土方さん!」
「なんでしょうじゃねぇ、こっち来い!」
言われるがまま、山崎はひたひたと素足でフローリングを歩いてくる。その音と、形よく伸びた足が、リアルだ。
「お前な・・・・なんちゅうカッコしてんだ このアホ!!」
「カッコって・・・・あの、これのことですか・・・・?」
そう言うと、山崎はぴらーっと雑巾を持っていない左手でスカートを捲り上げてみせる。セーラーのリボンと赤のブルマーが、程よく相まって、なんとも・・・・
「やめんかアホ!!」とすぐさま土方の鉄拳が落ちる。怒りのせいか何のせいか、その顔はリボンに負けず劣らず真っ赤だ。
「う”〜、でも、その・・・・一応見えてもいい下着、っていって沖田さんが置いてってくれたんで・・・・」
涙目になって殴られた頭に手を当てつつ、横向きになってひらひらと裾を振って見せた。これには土方のみならず、部員の半数以上が顔を押さえるか、前かがみになる。
「アンダースコートと究極の選択だったんですよ・・・・」
「そんなとこで究極の選択するなバカ!!」
土方は山崎の荷物を当人にぶん投げた。
「着替えがあんだろーがよ!さっさと着替えろ気色悪い」
「はい!!あ、でも・・・・一応6時まで、って約束なんですけど・・・・」
「〜〜〜〜〜〜〜!!」
土方は山崎の腕をつかむと、そのまま引っ張って体育館を出て行ってしまった。後には中途半端なダメージを受けた部員だけが取り残される。
「今日、土方さん止まんねーな、多分・・・・」



土方と山崎が、校門を出る。自転車通学の山崎のチャリを、土方が扱いで。チャリの荷台には、相変わらずセーラー服姿の山崎が横座りに腰掛ける。膝に、自分の鞄を乗せて。
「女のカッコしたらな、こうやって乗るんだよ!」
土方に促された乗り方だ。
(どう乗ったっていいのに。土方さん、絶対自分の主義・・・・というか好み入ってるよな)
山崎は思う。
(時々面白いなぁ、土方さんって)
思わず笑みがこぼれるついでに、そーっと土方の腰に腕を廻してみる。2人はこれからどこへ向かうのか。山崎は「面白い」どころで済むのか。
今はまだ、それは土方のみぞ知る。






救いようのない話になってしまった。3Z設定は、山崎=天然、土方=ムッツリスケベ推奨。
20070220