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毎日新聞 2004年7月14日 より

(10/13,lGTcUYrMさんから紹介いただきました)

 

予知最前線:
東海地震 島村英紀・北大教授、大震法に疑問 /愛知

 ◇「地震予知は科学者の夢でしかない」 地下の状態や詳しいメカニズム、未解明多過ぎる

 大規模地震対策特別措置法(大震法)は、東海地震の予知が可能との前提でつくられた。だが、地震予知は難しく、予知できない場合を考えた防災体制の必要性を訴える地震専門家も多い。その中でも北海道大地震火山研究観測センターの島村英紀教授(62)は「地震予知は科学者の夢でしかない」と断言するなど、歯に衣(きぬ)着せぬ論を展開する。このほど「公認『地震予知』を疑う」(柏書房)を著した島村さんに地震予知の難しさを聞いた。【黒尾透】

 「必ず起きる」とされる東海地震は、陸のプレートの下にフィリピン海プレートが潜り込むことで発生する。おおまかなメカニズムが分かっているからこそ、一般の人たちは予知は可能と思ってしまう。だが、地震学はまだ基礎研究の段階であり、予知は非科学的と島村さんは言う。

 「私も78年に大震法ができた時、予知はできると思っていた。だが、研究を続けるうちに疑問が出てきた。今になって思うと、地下のことを知らな過ぎた。地下の状態や詳しいメカニズムは分かっていない。これでは本来の科学ではなく、基礎的な学問でしかない」

 島村さんは「過去の地震でも、決め手となる前兆はつかんでいないんです」と語る。具体例として挙げるのが、03年十勝沖地震だ。マグニチュード8・0で、これは同年に起きた地震の中で世界最大だった。東海地震と同じプレート型地震であり、前兆現象があれば、それを東海地震にも応用できた。だが、前兆を観測できないまま、地震は突然起きた。研究者の多くはこの結果にショックを受けている。

 「北海道の観測点はゼロじゃない。新型のひずみ計もある。だが、いくら高精度でも、設置場所は地下200メートルでしかなく、一方震源は深さ42キロだった。東海地震の震源も深さ15〜30キロとひずみ計のはるか下。果たしてこれで、前兆現象を観測できるでしょうか。前兆をとらえきれなかったこの結果を、もっと直視すべきでしょう」と、島村さんは疑問を呈する。

 そもそも東海地震について研究者たちは、「いつかは起きる。うまくいけば予知ができるかもしれない」としか言わなかった。それが、「予知はできる」とすり替えられ、それが前提として大震法ができた。島村さんは、金をめぐる役所と研究者のもたれあいが背景にあると指摘する。

 「役人は、学説の中から都合のよいものだけを使ってきた。研究者の方も、予算が付いて予知の研究ができるといううまみがあった。それがこれまで、予知が極めて難しいということを言わない体質にしてきた」と島村さん。特に若い研究者は、お金が出るのが当たり前と思うようになっているという。予算の使い道についても「(地震観測機器などの)メーカー任せで、創意工夫がなくなってきている」。

 役所についても手厳しい。「気象庁は、東海地震の前兆現象としてプレスリップ(前兆すべり)を根拠にしてひずみ計を設置しているが、このプレスリップは仮説の一つに過ぎません。これまで一度も観測したことがないものです。経験がないもので予知をしようとするのが、はたして科学的と言えるでしょうか」

 地震学という基礎研究への予算投入や、一般の人たちへの啓発など、大震法が与えた恩恵もある。だが、地震予知への過剰な期待を生んだのも「まず大震法ありきで続けてきたのが元凶」と島村さんは指摘している。

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 ◇名古屋圏15カ所に広域防災拠点

 国や東海4県などでつくる「名古屋圏広域防災ネットワーク整備・連携方策検討委員会」がこのほど、直下型地震を想定した「名古屋圏広域防災ネットワーク整備基本構想」をまとめた。4県内の15カ所に広域防災拠点を設置する方針で、今後は各県による具体的な整備計画作りが始まる。防災拠点は救援物資備蓄や救援部隊のベースキャンプとなるだけに、ある程度の広さが必要で、公園などが中心になりそうだ。しかし、公園や公設施設はすでに住民の避難地に指定されている場所も多く、場所の決定には困難も予想される。

 15カ所のうち、名古屋空港と名古屋港近くを中核防災拠点とし、ここが救援活動の現地本部となる。実際に15カ所すべてを使うほどの大規模な地震はほとんどないとみられ、災害発生場所付近の拠点のいくつかを選んで使うことになる。

 広域防災拠点の15カ所は次の通り。

 ▽静岡県西部の第2東名道(建設中)引佐インターチェンジ(IC)周辺、必要最大規模は12ヘクタール▽岐阜県南部の美濃IC周辺8・5ヘクタール▽岐阜県南西部の関ケ原ICか大垣IC周辺10ヘクタール▽岐阜県南東部の土岐ICか瑞浪IC周辺5・5ヘクタール▽岐阜、愛知県境の一宮ICか一宮木曽川IC周辺(必要規模明記せず)

 ▽名古屋空港に近い春日井IC周辺29・5ヘクタール(中核広域防災拠点も兼ねる)▽豊田市付近の藤岡ICか勘八IC付近3ヘクタール▽名古屋港の周辺18ヘクタール(中核広域防災拠点も兼ねる)▽岡崎市付近の岡崎IC周辺22・5ヘクタール▽三河港に近い音羽蒲郡ICと豊川IC周辺(必要規模明記せず)▽衣浦港周辺4・5ヘクタール▽中部国際空港(建設中)周辺8・5ヘクタール

 ▽四日市港に近い四日市東ICか四日市IC、みえ朝日IC、みえ川越ICの周辺10・5ヘクタール▽第2名神道に近い亀山IC周辺14ヘクタール▽津松阪港に近い久居IC周辺9・5ヘクタール

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 ◇東海地震応急対策 最大11万5900人の応援部隊−−活動計画まとまる

 国の東海地震応急対策活動要領に伴う活動計画がこのほどまとまった。東海地震強化地域のうち東京都(島部)を除く7県へ、最大時に合計11万5900人の応援部隊が派遣されることになった。

 地震予知ができた場合に取られる活動計画。まず地震発生から12時間以内に派遣できる消火部隊は、3600人(うち愛知県200人、三重県200人)に過ぎない。その後2日間に派遣される救助部隊は、延べ7万8620人(うち愛知県1万940人、岐阜県200人、三重県2100人)に増加する。

 最大時に活動する部隊は、各都県内の警察や消防など含めると合計15万2200人(うち愛知2万2500人、岐阜3200人、三重5900人)。使われる艦船は184隻、航空機は430機としている。

 一方、広域医療運搬では、重傷患者は航空自衛隊の小牧基地(愛知県)や浜松基地(静岡県)などから輸送される。7県からの輸送目標患者総数は▽8時間以内113人▽24時間以内365人▽72時間以内151人。医師の派遣は計1500人が必要としながらも、派遣可能なのは124人に過ぎない。初期派遣の消火隊の少なさとともに、医師確保などが、今後の課題となっている。

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