
国は豊後で船部というて 伝平口説きに終いの口説き ところ何処と尋ねてみれば
船部在所に旧家がござる 旧家その字本田というて 昔栄えたその家所
いつの代にか仏の塔と 語り伝えて明治の終わり 伝平伝えて伝えて聞いて
それを見んとて船部に下る さても大きな仏の塔は 周り八尺長さは九尺
長く丸くて煙突のように 上は平らでツルツル光る 光るその面誰かの頭
または鏡のその面より 磨きなしたる仏の塔よ これは見事と打ち褒めそやし
これやこれこれ本田の氏よ 主の屋敷のその下ほどに 姿出したる仏の塔を
わしは気に入り欲しうてならぬ どうぞ私に譲っておくれ 云えば本田の館の主は
これは譲れぬこの石こそは 仏石とて縁がござる 縁話は長うはせぬが
昔この石屋敷の前に 立って在所やこの村々を 無病息災五穀の豊穣
云えば伝平しおれて帰る 月日経つのは間もないものよ 世代替わって主も替わる
ここに変わらぬ仏の塔と 心変わらぬ伝平さんよ 頃は八月夏草茂る
茂る夏草踏み掻き分けて またも昔の話をすれば 時の主は話のわかる
三十三四の働き盛り わしも仕事に追われてならぬ 仏石とて縁を聞けど
今になるまで祀りもできぬ これを貴方にうち差し上げて どうぞお祀りして下されと
云えば伝平うち喜んで やれ嬉しや仏の塔は 今の主がくれると言うた
これぞ真の仏の因是 わしという名を仏が知りて わしの所に嫁入ってござる
そこで伝平思うてみたが 仏の塔なら粗末にゃならぬ これをどこかにうち立てまして
昔名高い百姓の見方 佐倉宗吾郎うち象って 石碑建てましょ百姓の在所
ところ作物栄えるように 言うて願うて仕事にかかる