
船は出て行く帆かけて走る 茶屋の娘が出て招く
招けど船は寄らばこそ 思い切れとの風が吹く
竹になりたや紫竹の竹に もとは尺八 半ば笛
裏はそもじの筆の軸 思い参らせ候かしこ
文はやりたし書く手は持たぬ やるぞ白紙文と読め
書いたる文さえ読めないわしが まして白紙なんと読む
梅も八重咲く桜も八重に なぜに朝顔一重咲く
わしは朝日に憎まれて お日の出ぬ間にちらと咲く
ここは色街 廓の茶屋よ のれん引き上げお軽さん
由良之助さんわしゃここに 風に吹かれているわいな
鷺を烏と見たのが無理か 一羽の鳥さえ鶏と
雪という字も墨で書く あおいの花も赤く咲く
梅はもの云う桜は公家衆 花魁さんは山吹の
町人衆は桃の花 柳流しは世渡りの
浮気同志がついこうなって ああでもないと四畳半
湯のたぎるより音もなく あれ聞かしゃんせ松の風
夏の夕暮れ船漕ぎ出して さしで涼みの隅田川
人もうらやむ今日の首尾 実に嬉しじゃないかいな
水の出鼻の二人が仲は 堰かれ逢われぬ身の因果
たとえどなたの意見でも 思い切る気は更にない
忍ぶ恋路はさて儚さよ 今度逢うのが命懸け
よごす涙の白粉で その顔隠す無理な酒
屋根の簾を下ろして急ぐ 粋な爪弾き水調子
もしやそれかと似た声の 知らぬお方の面憎や