
わが恋は 住吉浦の夕景色 ただ青々と待つばかり 待つは憂いもの辛いもの
わが恋は 細谷川の丸木橋 渡るに怖し渡らねば 可愛い十市の手が切れる
わが恋は 細谷川の丸木橋 渡るに怖き渡らねば 思うお方に逢わりゃせぬ
奥山の 紅葉踏み分け鳴く鹿の 声聞く度に慕い来る 逢うてどうしよこうしよう
初花が 夫の勝五郎介抱して 箱根の山を引く車 さても貞女な操かな
わが恋は 人こそ知らぬ冬の夜に おもいつめたる厚氷 解けてたのしむ下ごころ
色がある 承知で惚れた横恋慕 言い出すからにはあくまでも 立てて貰わにゃならぬぞえ
川風に 簾まくりて舟の中 徒な姿の洗い髪 ちょっと松葉に黄楊の櫛
永い世の 宝船漕ぐ初参り 福寿集まりささめごと ほんに楽しい春遊び
春風に そよと上りし奴凧 骨が折れよが砕けよが 人の邪繰りじゃ切れはせぬ
月明り 見れば朧に舟の中 粋な爪弾き水調子 思い合うたる首尾の松
わが恋は 荒砥にかけし剃刀で 逢うてみたいと思えども 逢いもなさらにゃ切れもせぬ
わが恋は 逢わずは森の群れ烏 ただ逢お逢おと口ばかり 逢うて恋路を語りたい
わが恋は 畑の中の茶園様 八十八夜を待ちかねて わしを茶にして胴欲な
わが恋は 三国一の富士の雪 たとえ何方の意見でも 積もりゃすれども解けはせぬ
わが恋は 風が吹こうが雨降ろが 石となろうが火となろが 本望遂げねば諦めぬ
わが恋は 小坪のうちのほおずきほ 人にもまれて身を出され 末は夫婦となるわいな
浅草の 観音様の仰せには 必ず妻子のある人に 二世の約束せぬがよい