音頭交代の口説

(その1)

声が出ませぬ蚊の声ほども まだもやりたやこの先ゃ長い 長いけれども蚊の鳴く如く

声が出ませぬしばらくしばし 音頭切らしちゃそれこそすまぬ そこで皆様お頼み申す

しばし間の声継ぎゅ頼む ヤーレ嬉しや太夫さんが見えた 誰もどなたもお覚悟なされ

覚悟よければこの声さらば ※ここで交代する

じわっと受け取る先様お上手 先の太夫さん京都な江戸な 一で声よい二で節がよい

三で音頭の調子といわず 四で気楽にお口説きなさる 五でご評判山より高い

六つ昔の三太夫の声に 勝りゃするともひけ取りませぬ 七つ難なく流した後に

わしを見たよなごく下手者が 音頭切らしたその時こそは 先の太夫さんに助太刀頼む

わしの音頭で合うかは知らぬ 合うか合わぬか合わせちゃみましょ 合えば義経千本桜

合わにゃ高野の石堂丸よ 合わぬところは囃子で頼む 万に一つも合うたるならば

枯木花じゃと褒めくだしゃんせ 枯木花でも咲いたときゃ見事咲くか咲かぬか咲かせちゃみましょ

 

(その2)

見えた見えたよ太夫さんが見えた 見えた太夫さんにゃ渡すが道よ 誰もどなたもお覚悟なされ

覚悟よければこの口限り ※ここで交代する

貰いましたよ受け取りました わしの様なる若輩者が 音頭取るのもおおそれながら

まずは一声理と乗せましょか 何がよいかと探しちゃみたが 慣れぬ私にゃ見つかりませぬ

はやく出て来いよいよな文句 文句出なけりゃこの場が切れる この場切れては皆様困る

困りますればご先生にゃ返す ※ここで交代する

貰うた貰うたよ傘貰うた わしが出します薮から笹を つけておくれよコリャ短冊を

誰もどなたもお頼み申す 文句違いや仮名間違いは 平にその儀はお許しなされ

許しなされば文句にかかる

 

(その3)

まだもこの先ゃ千尋あれど 後にゃ太夫さんがつめかけておる 見えた音頭さんにゃ渡すが道よ

誰もどなたもお覚悟なされ 覚悟なさればこの口限り ※ここで交代する

貰うた貰うたよ傘貰うた 傘は貰うたが行こか知らぬ 行けばばそれよし行かぬとあらば

誰もどなたも囃子で頼む 囃子一番音頭が二番 囃子なければ口説かれませぬ

囃子つけても行かないときは 袖や袂にお隠しなされ

 

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