1000円アストログラフ
〜ミラーレンズは天体撮影に使えるか〜

●ジャンクレンズ

 2003年3月21日、カメラのキタムラ八戸店内のジャンクコーナーを別目的のためにあさっていたら、タムロン製の350mmF5.6ミラーレンズ(レフレックスレンズ)を見つけました。各社の500mmF8ミラーレンズの存在は知ってましたが、こんなスペックの物があることは全く知りませんでした。調べてみたら4年間しか生産されていなかったようです。
タムロンSP 350mm F/5.6 (http://www.tamron.co.jp/data/a2-lens/06b.htm

 レンズやミラーを見るとかなりカビが生えてます。マウントはペンタックスKでしたが、タムロン独自のアダプトール2マウントにより、他社マウントにも対応します。タムロンのSP90mmF2.5(ニコン用マウント付き)を持っているので、マウント交換すればS2Proに使えます。ここで少し悩みました。

・カビはレンズをバラせば何とか取れるかな。→2004年、分解してカビとりしました。
・S2Proに使うと525mm相当の画角になるので、星像が良ければお手軽星雲・星団撮影に使えそう。
・350mmでF5.6ということは口径62.5mmのはずだけど、前玉の直径は80mm近くある(フィルター径82mm)。ひょっとしたら副鏡での遮蔽率を考慮した実効F値が5.6なのかな。だとしたら短時間露出でも結構写るかも。
・ロシア製のミラーレンズは望遠鏡風の表記なので実効F値は1段ほど暗いらしい。これが当たり前の表記と思ってたら国内カメラ業界では違うようだ。さすが国産は良心的だと感心。


 ということで物欲が勝り、思い切って買ってみることにしました。

 その他の購入品(どれも1本1000円)
・Ai AF Zoom Nikkor 35-70mm F3.3-4.5S
  ほんの少しカビ有り。帰ってからS2Proに付けてみたらAFもきちんと作動したので頬が緩む。今までAFレンズが無かったためピント・露出ともフルマニュアルで苦労しながら一般写真を撮っていたのが、嘘のように楽になることに感動。
 →当たり前のことなんですがこれまでAF一眼を使ったことが無かったので・・・。本当は24mmから、できれば28mmからのズームがあれば文句無しだったんだが、新品や中古品を買う余裕はないので我慢我慢。
 
・タムロン AF35-90mm F/4-5.6 (http://www.tamron.co.jp/data/af-lens/63d.htm
  一般写真用としてはこちらが本命だったのだが、Fが暗すぎるせいか壊れているのかピントがいったりきたりで、さっぱり合焦しない。
  当初目的(構想中ネタのため内緒)に使うこととする。

●レンズの検証

 前玉の有効径は77mmでした。よって望遠鏡風の表記なら口径77mm、f350mm、F4.5ということになります。ただし副鏡金物の直径が41mmもあり28%の光量ロスがあります。それでも口径65mm相当でF5.4という計算結果になります。タムロンHPによると「反射率95%以上の銀蒸着ミラー」とあります。反射率95%が2面なのでそれを考慮すると口径62.5mm相当の光量でF5.6になるという結論を得ました。本当にそうなのかどうかは分かりません。

 レンズ構成図は見つけられませんでしたが、レンズをしげしげと眺めたりバラしたりしたところ、前玉が凸レンズ、ミラーはメニスカスレンズの裏面蒸着、最後部の30.5mmフィルターの直前にレデューサーと思われる凸レンズがありました。おそらくニコン製500mmF8と基本はほぼ同じと思います。

●試写結果

 S2Proの写野では周辺部までほぼ点像になります。光軸のズレのためか画像右上のみ少し流れます。色収差はほとんどなく105SDHFより良好です。明るさは撮影日時が違うので厳密な比較にはなりませんが、105SDHF(純正レデューサーでF5.1)と比べるとF5.6なりの写り方だと感じます。ただし周辺減光はあります。周辺でストンと落ちるというのではなく、中心部からなだらかに減光していきます。
 三脚台座(回転装置付き)があり、赤道儀に直付けできるので撮影準備時間が短くて済むのと、軽量コンパクトなため使い勝手は良好です。 



M42
・2003 3.22
・4分×2枚コンポジット
・S2Pro CCD-RAWから16bit-TIFFに変換後、6×6ソフトビニング、トーンカーブ調整などステライメージ3にて画像処理
・ビクセンスーパーポラリス赤道儀にて自動追尾
・撮影地:岩手県大野村




●眼視に使ってみると・・・

 直焦点対象確認アダプター(カメラレンズの後部にアイピースを取り付けるアダプター)にケルナー20mmを付けて、17.5倍で使ってみました。月を見ると、色収差が少なくすっきりとした感じでクレーターが結構見えます。木星はこの倍率では本体の縞模様は分かりませんが、面積をもった円盤状に見えます。
 昼間の風景では副鏡の陰が非常に気になる(眼をキョロキョロ動かすと黒くぼけた●が視野を動き回る)ので使えなさそうです。

●まとめ

 いままでミラーレンズによる天体写真作例をあまり見たことがありませんでしたが、色収差にシビアに反応するS2Proには向いている光学系だとの印象を持ちました。風が強いときや撮影準備時間がなくて105SDHFが使えないときに重宝しそうです。また、露出時間をあまりかけなくても良い散開星団には向いていそうです。

 現在はF5.6程度のミラーレンズは国産では見当たらずF8ばかりなのが残念ですが、似ているスペックのものとして、ロシア製のルビナー300mmF4.5があります。こちらは先述のとおり望遠鏡風表記のため、実効F値は5.6程度のようです。また、ルビナーには500mmF5.6というのもありますが、以前の月刊天文のテスト記事によれば実効F値は6.5以下とのことでしたので、S2Proに使うには少しFが暗いと思われます。


望遠鏡実験工房にもどる

トップページへもどる